ホイールバランスの重要性

車の部品の中で回転している物は?と聞かれて真っ先にタイヤ。という方ももちろんいらっしゃるでしょう。
実はタイヤ以外に回転している部品はものすごくあるのです。エンジンの内部で言いますと、クランクシャフト等が有名ですがこれに付随するコンロッド、ピストンこれらすべての部品は高度なバランスによって成り立っております。ドライブシャフトなども重要です。もし、これらの部品がバランス不良であったらどうなるか。
結果は激しい振動で車体が左右に振れだしてとても運転できる状態ではないでしょう。
タイヤ、ホイールもしかり、多少の振れを我慢したにしても今度は体が悲鳴をあげてしまいます。そしてこの振動というのがやっかいなのです。人間の体、特に眼球(目)は振動の影響により焦点があうまで時間がかかる様になり、それが疲労の原因となるのです。

ですから、安全運転という観点からみてもホイールバランスは重要なのです。バランスを調整することにより滑らかでスムーズな運転ができるのです。

■ホイール精度の話

ホイール精度とは、一般に車体及びバランサーに取り付け回転させた場合の真円度及びバランス誤差を指します。自動車メーカーも今まで厳しい基準に基づいてその車両に合わせて設計、製造している訳であります。もちろん工業製品で大量生産している以上、多少の誤差は免れないとしても、車によって基準の幅というのがあるということです。 一概には言えませんが、欧州車特にBENZ,BMW,PORSCHE,等は純正ホイールの基準の幅というのが特に厳格であるというものがあり、そして国産メーカーもそれを見習ってきたわけであります。一昔前、トヨタのセルシオが生産されるとき、セルシオ基準というのが話題になりました。その中で特にホイールの精度の幅を今までよりもさらに向上させるということが印象的でした。そして現在において国産メーカーの精度は以前よりもかなり良くなったと思います。

タイヤに関してベストな状態とは。タイヤの存在感がない。 これはタイヤマッチング、バランスを含め、足回りのサスペンション等が見事に車のシャーシに一心同体となり一体感を出していることであると思っております。
(車のボディ剛性は走行するにしたがって徐々に低下してきますが、これが問題になることもあります。)

それではハンドル振れ、車体振動についてお話しいたします。

ハンドル振れ、車体振動等は多くの方がバランス調整の不良、又はバランスウエイトの脱落が原因と思われておりますが、実際にはタイヤの組み付け不良(ユニフォミティが出ていない事)というのが多いようです。これは組み付けの際、多くの作業をする方が認識していないと思われるからです。又は自動車メーカーも同じであります。
現に私は1990年に日本を代表すると言われたホンダNSXを新車で購入し、がっかりした覚えがあります。慣らしの時点で気付いてはおりましたが、外してチェックしてみると4本中3本は×。組み付け不良で ビード部が上手く上がっていないということが判明しました。そのため、全てをホイールから外しもう一度丁寧に組み付け作業をし、応力分散式という方法でバランス調整を行いました。結果は見事にOK。その後に自動車雑誌社のご好意で谷田部テストコース 日本自動車研究所(JARI)の高速週回路を試す機会にも恵まれ、そしてそこで180キロのスピードリミッターがあっというまに作動するまで、何のストレスも無く走ることが出来たのは言うまでもありません。

又、こんな事もありました。1991年の事。あるディーラーの方より連絡があり、フェラーリコレクションで有名な方に納車をするにあたり、「日本輸入第一号の彼のフェラーリがどうもハンドルが振れてなおらない。専門店の何軒かに診てはもらったんだけど…」 という話がありました。車はグレイの512TRでまっさらな新車。当時としては始めての18インチのピレリPゼロが付いていたのには驚きました。私共はすでに18インチ対応のタイヤチェンジャーがありましたので遠慮なく作業させて頂きました。
やはり点検してみるとタイヤ、ホイールとの組付けが不十分ということが判明し、もちろん一から組直しすることで問題が解決し、後に丁寧にもご本人からお礼の言葉をいただきかえってこちらが恐縮いたしました。

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