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ダイヤモンド

これはBENZ純正のEクラス用ホイール。
ホイールの表面をきれいに切削し、光の加減で虹色に輝きます。
まるでCDディスク。 一般にダイヤモンドカットとも言います。
今では高級車には主流になりましたが、各自動車メーカーがホイールにこのような加工をするのは、つい最近の事。 考えた人は素晴らしいと思います。

さて、あと50年後にはどんなホイールが主流なのでしょうか。 

いや、もしかするとホイールはもう無くなっているかも…..

もしかするとホイールはゴム製またはプラスチック製に風変わりし、タイヤと同じ素材だったりして…..。
しかもタイヤはエアーレス。(中身はスポンジ状)だからエアーの補充は要らない。
もちろんパンクの心配がないわけで、安全かつ経済的に車が走ることができます。
車は電気自動車で、家庭用コンセントからの充電、又は天気の良い日は太陽光線をソーラーパネルを通して充電できるしくみ。

考えるだけで楽しくなってきましたが(妄想です。)、 肝心のタイヤ屋さんは?はて。 
このホイールを見ながら、ふと思う今日この頃でした。

ホイールバランスの重要性

車の部品の中で回転している物は?と聞かれて真っ先にタイヤ。という方ももちろんいらっしゃるでしょう。
実はタイヤ以外に回転している部品はものすごくあるのです。エンジンの内部で言いますと、クランクシャフト等が有名ですがこれに付随するコンロッド、ピストンこれらすべての部品は高度なバランスによって成り立っております。ドライブシャフトなども重要です。もし、これらの部品がバランス不良であったらどうなるか。
結果は激しい振動で車体が左右に振れだしてとても運転できる状態ではないでしょう。
タイヤ、ホイールもしかり、多少の振れを我慢したにしても今度は体が悲鳴をあげてしまいます。そしてこの振動というのがやっかいなのです。人間の体、特に眼球(目)は振動の影響により焦点があうまで時間がかかる様になり、それが疲労の原因となるのです。

ですから、安全運転という観点からみてもホイールバランスは重要なのです。バランスを調整することにより滑らかでスムーズな運転ができるのです。

■ホイール精度の話

ホイール精度とは、一般に車体及びバランサーに取り付け回転させた場合の真円度及びバランス誤差を指します。自動車メーカーも今まで厳しい基準に基づいてその車両に合わせて設計、製造している訳であります。もちろん工業製品で大量生産している以上、多少の誤差は免れないとしても、車によって基準の幅というのがあるということです。 一概には言えませんが、欧州車特にBENZ,BMW,PORSCHE,等は純正ホイールの基準の幅というのが特に厳格であるというものがあり、そして国産メーカーもそれを見習ってきたわけであります。一昔前、トヨタのセルシオが生産されるとき、セルシオ基準というのが話題になりました。その中で特にホイールの精度の幅を今までよりもさらに向上させるということが印象的でした。そして現在において国産メーカーの精度は以前よりもかなり良くなったと思います。

タイヤに関してベストな状態とは。タイヤの存在感がない。 これはタイヤマッチング、バランスを含め、足回りのサスペンション等が見事に車のシャーシに一心同体となり一体感を出していることであると思っております。
(車のボディ剛性は走行するにしたがって徐々に低下してきますが、これが問題になることもあります。)

それではハンドル振れ、車体振動についてお話しいたします。

ハンドル振れ、車体振動等は多くの方がバランス調整の不良、又はバランスウエイトの脱落が原因と思われておりますが、実際にはタイヤの組み付け不良(ユニフォミティが出ていない事)というのが多いようです。これは組み付けの際、多くの作業をする方が認識していないと思われるからです。又は自動車メーカーも同じであります。
現に私は1990年に日本を代表すると言われたホンダNSXを新車で購入し、がっかりした覚えがあります。慣らしの時点で気付いてはおりましたが、外してチェックしてみると4本中3本は×。組み付け不良で ビード部が上手く上がっていないということが判明しました。そのため、全てをホイールから外しもう一度丁寧に組み付け作業をし、応力分散式という方法でバランス調整を行いました。結果は見事にOK。その後に自動車雑誌社のご好意で谷田部テストコース 日本自動車研究所(JARI)の高速週回路を試す機会にも恵まれ、そしてそこで180キロのスピードリミッターがあっというまに作動するまで、何のストレスも無く走ることが出来たのは言うまでもありません。

又、こんな事もありました。1991年の事。あるディーラーの方より連絡があり、フェラーリコレクションで有名な方に納車をするにあたり、「日本輸入第一号の彼のフェラーリがどうもハンドルが振れてなおらない。専門店の何軒かに診てはもらったんだけど…」 という話がありました。車はグレイの512TRでまっさらな新車。当時としては始めての18インチのピレリPゼロが付いていたのには驚きました。私共はすでに18インチ対応のタイヤチェンジャーがありましたので遠慮なく作業させて頂きました。
やはり点検してみるとタイヤ、ホイールとの組付けが不十分ということが判明し、もちろん一から組直しすることで問題が解決し、後に丁寧にもご本人からお礼の言葉をいただきかえってこちらが恐縮いたしました。

ホイールの金属疲労の問題。

意外と知られてはいないようですが高い負荷がかかったホイールには金属疲労による割れ(クラック)がみられる場合があります。つまり規定以上の重さ(荷重)や、トルクがかかると割れてしまうということです。こうなると危険ですので交換となります。

スポーク部(デザイン面)が割れたアルミホイール。もちろんホイールもタイヤ同様に重要な部品ですので注意が必要です。

<ホイールの経年変化による金属疲労及び腐食の問題。>

ここでホイールの経年変化による金属疲労及び腐食の問題についてお話しいたします。

スーパースポーツカー及びスーパーカーのホイールも15年以上経ちますと必ずと言っていいほどこれらの問題が深刻になると思います。ましてや過酷な条件で使われたホイールは金属疲労により本来の性能が発揮できない場合があります。又、腐食のためにチューブレス効果が期待できないものもあると思います。

以前にお客様のオーダーで、本国イタリアより LANCIA STRATOS の純正ホイールを取り寄せたことがあります。旧カンパニョーロのテクノマグネシオの日本代理店に問い合わせたところ、何とオーダーすれば作ってくれるという話でしたが、納期が余りにもかかるという事で直接探す事になりました。結局、メーカーにあったオリジナルホイール最後の4枚(当時もの)をLANCIA社から直接分けてもらうことになりました。現物が到着し箱を開けてみるとそこには赤茶色(ブロンズ)のワークスホイールが鎮座していました。30年前のホイール。持ってみると紙のように軽い!(マグネシウムの保有量が多いため)これには驚きました。しかし喜ぶのもつかの間、よく見ると大変な事に気付ました。ホイールの側面には細かい穴が。やはり未使用新品でもこうなのかと落胆しました。さらに塗装を剥離してみるとさらに2、3ヶ所腐食がみられました。 結局、それらの部分を全て取り除いて修正及び塗装し出来上がりましたが、さすがに実車に装着まではできませんでした。
アルミホイール及びマグネシウムホイールの場合保存状態にもよりますが、良い状態を保つには特に湿気等に気を使うのが重要です。

これは Ferrari F40のホイール。色々な所で話題になりますが、このSpeedline製のホイールは全くといっていいほどのレーシング用ホイール。肉厚はかなり薄く、クローズドのサーキットコースならいざ知らず、一般公道用としては疑問に残る程のものです。実車の車体重量が軽いとはいえ、478psというハイパワーをやはり高性能なタイヤとの組み合わせで路面に炸裂されるF40。走行時にかかるストレスは想像以上に大きいのです。

弊社の今までのF40の経験によりますと、一番多いトラブルはまずピアスボルトからのエアー漏れ。これは普通に起こります。 新車の状態で漏れているのも何台か確認しております。この原因はホイールが3ピース構造にあるのですが、サンドイッチされているはずのガスケットの厚みが極端に薄く、この部分に過度の負担がかかるものと思われます。 又、ブレーキの熱による劣化。これが一番の問題となります。スポーツ走行中のブレーキローターの表面温度は一般に700℃以上といわれており、特にハードなスポーツ走行をされた個体にこのエアー漏れが多いというのは、まずこれらが原因かと思われます。

これらを防ぐ為に私共ではある特殊なコーキング剤にて処理をしております。これは劣化したガスケット剤を除去した後に真空引きをしながら新たなガスケット剤を注入する方法です。これによりタイヤ交換後のエアー漏れは止めることができます。 又、補強の面からも確かな効果が証明されております。

次に金属疲労及びホイールの歪みについての問題ですが、Ferrari F40に限らず大口径ホイールは路面に対する負荷が大きく、走行中はいつも歪みという危険にさらされております。つまり路面の衝撃を吸収しきれない場合が多いということです。 ご自分で路面の凹凸などに気を使っている方はまだしも、一般にタイヤ交換前に検品してみると以外に歪みがでている場合が多いと思います。頻度はさまざまですが、外見では分らなくてもバランサーで点検してみるとはじめてわかります。 上下、横方向を回転させながらチェックすると新品時には止まって見えるものが、歪があると振れてみえるのです。 0.5mmの振れでも滑らかな乗り味は期待できないわけで、いくらバランスウェイトのみのバランス調整を済ませたところでハンドル振れ等が直らないという事はよくある話です。この場合、新品に交換するかもしくはある程度は修正が可能ですので、どちらかの選択が望ましいと思われます。

(独)ポルシェ社指定 ダイナミックホイルバランサー(カールシェンク製)

(独)ポルシェ社指定 ダイナミックホイルバランサー(カールシェンク製)
弊社が使用するカールシェンク社製のバランサーは世界特許にて横回りにてバランスを測定します。(ポルシェ社指定)
横置き横回りの方法は取り付け誤差の発生が少なく世界最高の精度を可能にしています。